第1回は、やっぱりジュエリーの話から。ジュエリーの仕事をしているとだれもが行き当たる事だと思うけど、僕もずいぶん前からいろいろと試行錯誤し続けている事がある。それは一体なんだというと、単純な話で石の留め方なんです。石の留め方の歴史を探るとそれはもう先人達がやり尽くしている感があるから、なかなか独自の石留めなんてたどり着かない。でもある時、原石を眺めてたら試してみたい留め方を思いついた。石の結晶は基本的に壁や石の中に混入している事が多い、結晶の成り立ちを石留めに応用したらどうだろうか、というアイデアを。イメージは、石の一部が壁にめり込んだ状態で最小限の爪で石を留めるという方法。しっくりくる形に落とし込むには少し時間がかかったが、出来上がった時は一人机にむかって普段出さない声出して興奮してた気がする。同じような原理で留める方法はあるのだけれど、製作物を壁に見立てて留めるとは、なんとも自分らしい留め方ではないか、そんな気がしています。そう、それが長々と紹介している《WALL SETTING/ウォールセッティング》という留め方、もちろん僕が勝手に名付けただけだから、誰も知らない留め方。すでに出来上がっているものや、進行形で作っているアイテムの原型だったりを交えながら、製作過程などを紹介したいと思う。
ジュエリー製作はいろいろな方法があるが、普段は鋳造という技法を使って作る事が多い。WAX(ロウ)の塊から原型となる形をヤスリやナイフなんかで削ったりして形を作っていく。写真のグリーンの物体がその原型です。もちろん作り方に決まりはないので、どんな風に削っても、目的の形になればOK。鋳造は自由度が高くイメージ通りに作りやすいから好きだ。
ちなみに今回留める石はトルマリン。今から何億年も前に地中深くで結晶化したものが隆起し地表に押し上げられ、浸食・運搬・沈積など堆積作用を繰り返して地表に出たものが何らかの作用で川で運ばれる事になったのだと思う。そんな事を想像したのはこんな状態だったから。
石を集め出してもう20年以上になる。ようは好きだという事ですが、石の事を書き出すと長くなりそうなので今回はやめときます。原石のカットは山梨の宝石研磨専門の職人さんにお願いした。石はだいたい綺麗な部分だけを取り出すようにカットする事が多いんだけど、今回はなるべく原石の雰囲気を残したままにしたかったので、内包物やクラックなどもあえて残すようにお願いした。理由は指輪の紹介ページに記載した通り。
出来上がった石はどれもイメージ通り良い雰囲気のものばかりでした。
今回はタイミングが合わず会う事が出来なかったけど、また改めて職人さんに会う機会があったら宝石の研磨工程なんかも紹介したいと思います。原型が出来上がったら鋳造の作業に入ります。協力工場へお願いしてこの原型を鋳造して金属にしてもらいます。
上記の写真2枚が鋳造から上がってきたもの。湯道と呼ばれる金属が流れ込んだ痕を削り、ぴったり石が枠に合うように石合わせを行う。そしたら今度は仕上げの作業に入ります。仕上げは、PROOF OF GUILDのアトリエ、ご協力いただいている職人さんと手分けをして作業を進めます。下記の写真は、Jewelry Factory Ray の中込さん。数年まえからお手伝いをお願いしている、とっても信頼できる職人さんです。現在3人の職人さん達でいろんなブランドさんの製作も手がけています。
写真5/6のペンダントトップはまだ仕上がっていませんが、仕上がったウォールセッティングの指輪が下の写真。完成までの大体のながれこんな感じです。すこし脱線気味なところもありましたが、こんな風にPROOF OF GUILDのジュエリーが仕上がっていきます。
PROOF OF GUILD/竹内 稔